カテゴリ:魯敏・離歌 ( 14 )

離歌11

  没等立秋,彭老人就忙着给桥桩上桐油了。天气燥,干得快。
  他每天上午下午各来一趟,慢慢儿一根一根刷。又香鼻子又辣眼睛的桐油味儿弥散开来,把人都给熏得昏沉沉的。
  河水忽快忽慢地淌着,也似让这桐油香给迷糊了。
  这天下午,他来刷第二遍。三爷刚刚午睡了起来,坐在树阴下的桐油味儿里发呆。
  “三爷,我给你讲个故事醒觉吧。”看着太阳下油得发亮的桥桩,彭老人高兴起来。“就是上次答应跟你说的……喜欢个谁……”
  三爷其实倒忘了。“敢情好,那你说说。”
  “说起来,那时我还没结婚呢……”
  “嗯。”三爷揉揉眼睛,没睡醒。
  “她呀,就住在河对过、在你那边。那时河对面是有两三家人的。”彭老人往三爷后面张望起来,像在看  很远的地方。
  三爷给他看得犯疑,也往后看看。除了半片山,没别的。


 立秋も待たず老人は橋桁に桐の油を塗るのに忙しくしていた。からっとした天気なので乾くのが早い。
老人は毎日午前も午後もやって来て、のんびりと一本一本塗っていた。鼻を突き目を刺す桐油の臭気は広がって人をぼうっとさせる。川は急に速くなったと思うと、またゆっくりとなりながらも、せわしなく流れて行く。桐油の匂いに川もまた迷わされているようであった。
この日の午後、老人は二度目の油を塗りに来た。三爷は午睡から起きたばかりなのに、木陰に座り桐油の匂いでぼんやりとしていた。

 「三爷、目ざましに一つ話してやるよ。」陽に照らされて橋桁は油で光り、老人は楽しそうであった。「ほら、この前お前に話してやるっていった・・・好きになったあれの・・・」
 だが三爷はその実、忘れていた。「それはいい、あにさん、聞かせてくれよ。」
 「そうさな、あの時俺はまだ結婚していなかった・・・」
 「うん。」三爷は目をこすった、目が覚めない。
 「彼女は河の向こうに住んでいた。お前のいるそっちにな。あの頃は2,3軒の家があったんだ。」老人は遠くを見るように、三爷の後ろの方を眺めた。
老人が何を見ているのかと、訝しく三爷も振りかえった。山の半分以外は何もない。
   
  “她那时才十九,夏天在河边洗衣服时,总喜欢用木盆舀了水洗一洗头……我就在这边瞧着……那头发,可真黑,还亮。”
  “我隔着河跟她说话。她低头听着,但不应。”
  “有一次,她手一滑,木盆落到河里了,漂到河中央了,我下去替她捞了。这样,她才跟我说起话来……”
  “我过桥到她家去过一趟。她有个哥哥,腿不好,从小不能站。我跟她哥哥说了几句。她就在她房门前站着,总瞧着我,我也总瞧着她。”
  “不久,他哥娶了、她嫁了,是同一个人家。她若不嫁,她哥便娶不了。”

 「あの子は19だった、夏に河で洗濯をする時はいつも、木桶で水を汲んで髪を洗うのが好きだったな・・・俺は此処から見ていた・・・あの子の髪は真っ黒でつやつやしていた。」
 「俺は川をはさんで話し掛けた。彼女は顔を伏せて聞いてはいたが、返事はしなかった。」
 「一度、手を滑らせて木桶を落としてしまった。川の真ん中まで流されたから、俺は取ってやったよ。それで、やっと俺に口をきいた・・・」
 「橋を渡ってその子の家に一度行った事がある。兄さんがいたが足が悪くて、小さい頃から立てなかった。その兄さんと俺は少し話をしたよ。あの子は戸のところに立って、じっと俺を見ていた。俺も見つめていたよ。」
 「暫くして兄さんは結婚し、あれも嫁いだ。兄嫁さんの実家にな。もしあの子が行かなかったら、兄さんのとこに嫁も来ないのさ。」

  “过了两年,我也就托人说媒另娶了亲。你们河那边,我就再也没去过。”
  “这事情,本以为,我早忘了……可奇怪,到老了,倒记得越来越清爽,有过那么一回,我过了桥去她家……”
  还等着往下听呢,老人倒结束了,嗨,就这么着,也算个故事?三爷闭着眼摇摇头:“你倒说得我更瞌睡了。”
  彭老人倒也没生气,他举起手嗅嗅上面的桐油味儿:“我那口樟木棺材,这两天我也顺便在给它上油呢,真好,黑黑亮亮,瞧着都踏实……好了,回去!”
  三爷瞧他拎着小油桶的背影,头一次发觉,咦,这老人,背都那么驼下来了!三爷瞧见许多老人,从驼背开始,就老得特别的快了——好像被大地吸引着,往下面走似的。

 「二年経って、俺も世話してもらって嫁を取った。川のそっちのお前の方へは、それから行った事がない。」
 「この事は、もうすっかり忘れていた・・・だがおかしな事に、年を取ったら却ってはっきりと思い出される。一度あるんだよ、この橋を渡って彼女の家に行った事がな・・・」
まだ聞こうと思っていたのに、老人は口を閉じた。ああ?話はそれだけなのか? 三爷は目を閉じ頭を揺らした。「あにさんの話でもっと眠くなった。」
 
老人は気を悪くもせず、手を上げ桐油の臭気を嗅ぎ「俺の樟の棺桶も、昨日と今日、油を塗った。凄くいいぞ。黒く艶々で見てるだけで落ち着く・・・さあ、帰るか。」
三爷は油の小桶を提げた老人の後ろ姿を見て、初めて気がついた。ああ、この人の背中はこんなにも丸くなっていたのか!たくさんの老人を見てきたが、背中が曲がり始めると、急に老けこんでしまう、まるで地面に引っ張られて沈んでいく様ではないか。
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by dangao41 | 2011-08-15 04:54 | 魯敏・離歌  | Comments(0)

離歌12

  秋天非常慢地来了,小河里开始铺起一层枯叶枯枝,还有掉下来的野浆果子,三爷有时划船经过,捞一些上来,已被小鸟啄得满是小洞,洗洗咬开一吃,酸得真甜。三爷便让小黑船停在水中打圈,一心一意感觉那甜味在齿间消磨——日子里的许多好处,他都喜欢这样小气而慢慢地受用,因他知道,这日子,不是自己的,而是上天的,他赐你一日便是一日,要好好过……他有时想把这感悟跟旁人都说一说,却又觉得,说出来便不好,也是叫大家都不得劲了。

 秋は非常にゆっくりと訪れた。小さな河に枯れた葉や枝が積もり始め、その上、流れてきた野生のブドウやトマトもある。三爷は船を漕いでいる時、掬い取ってみた。小鳥についばまれて瑕になってはいるが洗って一口齧れば、酸っぱいがとても甘くもあった。彼は黒い小舟を止めて水面に漂うままにし、ただひたすら歯間に消えていく果実の甘みを味わった――日常の日々にも様々な好い事がある。三爷はこんなにも小さな、ゆっくりと訪れる心地よさを楽しんだ。彼はこの日々が自分の物ではなく、神の物だと知っていた。神は人に一日、一日と与える、大事に生きなければ・・・三爷は時としてこの悟りを周りの人々にも説きたいと思う事があるのだが、うまく言葉に出来ないとも思うのだ。人には伝えられないと。
 
  不过,就算他什么也不说,从夏到秋,还是出门了不少趟——老牛倌被人发现死在牛棚里。张家老大,因为欠债,竟不声不响寻死去了。宋裁缝的老母亲,大暑第二天,嚷着热嚷着头昏就过去了。
  那河水倒还好好地丰满着,瘦都没瘦。
  彭老人没什么事可做,但仍是每天在对岸坐坐,带着水烟袋,想起什么,便装着无心般地跟三爷东扯西拉。
一会儿问刻碑的材石,一会儿论起吹打班子的价钱,一会儿疑惑着相片与画像的好坏:三爷,我想不通,那相片,按说是真的,可不论谁,总越瞧越不像。可画像呢,那么假,我倒是越看越像他本人……


 しかし、彼が何も言わなくても、夏から秋へと時は移り、多くの人が逝ってしまった――年寄りの牛飼いは牛舎で事切れていたのを見つけられた。張家の老人は負債があったがために、ひっそりと死を尋ねて行った。宋裁縫師の母は大暑の二日目に暑い暑いと倒れ、それっきりであった。
 
川の水はしかし満々と流れ、涸れるどころではなかった。
彭老人は仕事はしなかったが毎日やって来た。対岸に座り水煙管を手に胸に何か秘めつつも、無心を装いながら三爷と取りとめもなく話をした。

 墓にする石材の事を尋ねたり、葬式鳴り物の代金を語ったり、写真と肖像画のどちらが良いかなどなどを。なあ三爷、俺には分からないんだが、写真は本人そっくりだと言うが、なるほど誰もがそう言うが、いつだってよくよく見れば似ていない。肖像画はな、実物ではないが、見れば見る程本人そっくりだと俺には思えるがな・・・


  这天,他又突然想起这个:“你们那大和尚,还是打算让他儿子接班当和尚?”
  他问的是通常跟三爷一块儿出入丧仪的俗和尚。在东坝,俗和尚也是讨生活的一门手艺,他照样娶妻生养,酒肉穿肠,需要时才披挂上珠袍,敲起小木鱼,超度亡魂。只要模样圆满、唱经婉转,便是好的。经常有人特地赶来,痴站在一边,就为听大和尚念经,一边不自觉地掉下泪来,却又说不清到底伤心什么。

 この日、老人は突然思い出して言った。「あの親父の方の和尚な、息子に住職を継がせるつもりかな?」
 老人の聞いたのは、いつも三爷と一緒に葬式を仕切っている生臭和尚のことだ。東堰では僧職は生計のたつきであり、人並みに妻帯し子を持つし、酒も飲めば肉も喰らう。そして必要があれば衣を着け数珠を持ち、木魚を鳴らし死者のために経を読む。型どおりに手抜かりなく、耳に心地よく経を唱えれば、それはそれでよき事である。いつも誰かがわざわざやって来て、傍に立ち和尚の詠む経に涙を流しながら一心に聴き入っている。が一体なぜに悲しいのかはっきりは分からないのである。 
  
  “是啊,他那儿子,有时跟在大和尚后面出来;有时单独主事,耳朵上也夹着烟,老练得很。”
  彭老人担心了:“我就只中意大和尚唱经,他唱得响,声音也拖得长。那到时可怎么办?我可不要那小家伙……”
  三爷一听便懂,却不愿说得明白:“你只管放心。我跟大和尚,还是有些交情的。”
  彭老人突然站起来,脸上激动得变了模样:“三爷,你待我这样好……真把我愧死了!其实……我修这桥,存有私心……”
  三爷瞧老人摇摇晃晃的,欲伸手去扶,却够不着,那河水隔着!“老哥,瞧你这话说的!你天天在这里敲敲打打,还说什么私心不私心?”

 「そう、あの息子は和尚に付いて来る時もあるが、時には一人で取り仕切る。耳に煙草を挟んだりして、手慣れたものさ。」
彭老人は心配した、「俺は親父の和尚がいい。経の声はよく通って余韻がある。俺の時、どうしたもんだろう?倅には来て欲しくない・・・」
三爷はそれを聞くだけで理解したが、敢えて口にしたくはなかった。「心配いらない。俺は和尚と付き合いがあるんだから。」

 老人はいきなり立ち上がった。心の高ぶりで表情が変わっていた。「三爷、なんて好くしてくれるんだ・・・俺は心底恥ずかしい!実はな・・・橋を直したのには、分けがある・・・」
老人がふらついたのを見て、三爷は手を差し伸べて支えたいと思ったが、届きはしない。川の水が隔てている。「あにさん、そんな事を言うなよ!毎日毎日仕事してくれて分けも何もないだろうが?」
  
  “……三爷,你是知道的,我自小到老,七十三年,一直都在东坝,哪里都没去过,半步都没离过,弄了一辈子庄稼地,这里的沟啊水啊树啊,不论哪个角角落落的,我真的都舍不下,恨不能一并带到那边去……我总想着,临了到最后那一晚,魂都要飞走了,我哪能不到处走走瞧瞧?特别是河那边,我前后统共只去过一次,怎么着也得再去看看啊……所以呢,我其实主要是为了自己,到了那晚上,要没个桥,黑里头,可真不方便过去……”老人没忍住,伸手掬了把泪,手背上一块又一块黄豆大的圆黄斑。他是真老了。
 三爷望望对面,这才注意到,不知什么时候,老人已经把那些木板、桥墩儿按照桥的模样,有板有眼地排在那里,冷不丁一看,像是有座木桥活灵活现地卧在秋风里。

 「・・・三爷、お前も知ってるだろうが、俺は生まれた時から七十三年間ずっと東堰に暮らした、どこにも行った事がない、半歩といえど離れた事はない。一生を畑で過ごした。この土地の小道も流れも木々も、どんな隅っこだって、置いてくことはしたくない。ここを一緒に持ってあっちに行かれないのが悔しい・・・俺はいつも思っていた、最後の晩に魂は飛び回る。どこもかしこも見られるだろうか?特に河の向こうな、後にも先にも一度しか行ったことがないのに、どうやったらもう一回行けるか・・・だからな、俺は自分のためにやったんだ。その時がきて橋がなかったら、真っ暗闇で行かれないじゃないか・・・」老人は耐えきれずに、大豆程の黄色いシミの出ている手で涙をぬぐった。本当に老いたものだ・・・  
 
三爷は向こう岸を見てやっと気が付いたのだが、何時の間にしたものか老人は既に木材を手に橋桁を並べていた。きちんと適所に嵌るように。いきなりに、秋風のなか、橋は本当に架かっているように見えた。
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by dangao41 | 2011-08-15 03:45 | 魯敏・離歌  | Comments(0)

離歌13

  彭老人到底没等到冬天水枯。
  他到米缸取米——东坝有一种米缸,叫大洋团,小口大肚,深约半人——米可能不多了,加之腰驼,老人站在小凳上伸头进去,不承想脚下凳子一滑,头朝下栽进去。
  三爷几天不见他来,划了船过河去看,迟了,该着三天都过去了。

 老人が冬の水涸れを待つ事はなかった。
 米を取りに行き――東堰には大洋団と呼ばれる、人の半分ほどの丈の口のすぼまった甕型の米櫃があった――米が一杯ではなかったろうし、老人の腰も曲がっていた。踏み台に乗って上半身を屈めると、思いがけなくも足が滑り、頭から真っ逆さまに落ちてしまった。
 三爷は老人が数日姿を見せないので船を漕ぎ川を渡ったが、既に遅かった。3日も過ぎていたのであった。
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by dangao41 | 2011-08-15 02:51 | 魯敏・離歌  | Comments(0)

離歌14 (終)

  清晨的雾气里,三爷到地里扯了两个老萎了的晚南瓜,又红又圆,还带着湿漉漉的秧儿,悄悄放在彭老人身边,端庄敦厚,样子蛮好。当天其他的丧仪,仍依着各样的程序,一步一步地来。前来帮忙的妇女们,围成一堆,不免又提到那木桥,好像木桥成了孤儿似的,它的命,没人说得好。
  到晚上,人差不多散了,三爷照例要回家替彭老人准备纸活——回来奔丧的两子一女及一群孩子木呆而疲倦地坐在灯下守夜。三爷走了好远,突又转回来嘱咐:“今天晚上,记住,家中所有的门,万不可关啊。”那群儿女果然不懂,但仍诧异地应了。
 
 朝霧の中を三爷は畑へ行き、萎びた遅成りのカボチャを二つ取った。赤くて丸く未だじくじくと湿っている蔓をつけていた。老人の傍にそっと置いたが、どっしりと立派で形のきれいなカボチャであった。その日の葬儀は従来通りの手順で一つひとつ進められた。やって来た手伝いの女たちは、寄り合えばあの橋を話題に持ち出さずにはいられなかった。まるで橋は孤児になったようで先行きどうなるのか誰にも分からない。
 
夜になり大方の人々は立ち去り、三爷もいつも通り老人のための紙細工を用意しに家に戻る----葬儀のために帰郷した息子二人と娘、孫たちは気も抜け疲労しつつも灯りの元に座り通夜を行う。三爷はかなり行ったところで急に向きを変え戻って来ると言った。「忘れないでくれ、今夜は家中の戸口を絶対に閉めてはいけないよ。」案の定、子供たちは分かっていなかったが、訝りながらも承知した。

  三爷来到河边,看到那漂漂亮亮卧着的木桥,又宽又结实,月光下,发着黄白的油光,像是活了一般。
  他在河岸边坐着,等了好久,然后才上船,划得极慢——船,好像比平常略沉一些,却又分外飘逸——到了自家的岸边,他复又坐下,头朝着那模糊而森严的半片山张望,仍像在等人。等了一会儿,再重新慢慢划过去。
  往返两岸,如是一夜。
  水在夜色中黑亮黑亮,那样澄明,像是通到无边的深处。

 三爷が川辺まで戻ると、岸に整えて置かれた橋が見えた。幅広く頑丈で月明かりの下で金と銀に輝き、実際に川に架かっているかのようであった。
 彼は岸に腰を下ろし長いこと待った。それからやっと船を出しゆっくりゆっくり漕いだ----船は、普段より少し重くなったようでもあり、軽く漂っているようでもあった----向こうの岸辺に着くと三爷はまた座りこんだ。霞んだ険しい山の面に顔を向け、やはり人を待つように。暫く経つと、またゆっくり船を漕ぎ向こうへ渡った。
両岸を往って返してと、かくの如くの一夜であった。
水は夜の闇に黒々ときらめいて、果てのない深い淵まで届いているかのように澄んでいた。 (終)

2010/6

原文 http://www.eduww.com/xsxk8010/ShowArticle.asp?ArticleID=20249
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by dangao41 | 2011-08-15 01:01 | 魯敏・離歌  | Comments(0)