順姐の自由恋愛5 (終)

顺姐在乡间重逢自己的哥哥。哥哥诧怪说:“我们都翻了身,你怎么倒翻下去了
呢?”村干部也承认当初把她错划了阶级,因为她并非小老婆,只是个丫头,当地人都
知道的。这个地主家有一名轿夫、一名厨子还活着,都可作证。“文革”中,顺姐的大
女儿因出身不好,已退伍转业。儿子由同一缘故,未得申请入党。儿女们都要为妈妈要
求纠正错划,然后才能把她的户口迁回北京。

村にいる時に順姐は兄に再会したが、兄は訝しげに言った、「俺たちは解放されたのに、なんでお前は違うんだ?」村の幹部は彼女の階級が初め間違って区分されたのを知っていた。彼女は若奥さんどころか女中に過ぎなかったのだから。地主の家の車夫と料理番がまだ存命で証人となった。「文革」中は順姐の子供たちは出身が悪いため除隊し職を変えた。息子は同自理由で入党願を出せなかった。子供たちも母親の名誉回復が必要だったのである。そしてやっと戸籍を北京に戻すことができた。

他们中间有“笔杆子”,写了申请书请我过目。他们笔下的顺姐,简直就是电影里
的“白毛女”。顺姐对此没发表意见。我当然也没有意见。他们为了纠正错划的阶级,
在北京原住处的居委和乡村干部两方双管齐下,送了不少“人事”。儿子女儿还特地回
乡一次。但事情老拖着。村干部说:“没有问题,只待外调,不过一时还没有机会。”
北京街道上那位大娘满口答应,说只需到派出所一谈就妥。我怀疑两方都是受了礼物,
空口敷衍。

子供の中で「筆の立つ者」が申請書を書き私に目を通してくれと頼んだが、順姐をまさしく映画の「白毛女」に例えていた。彼女はこれに関してなにも言わなかった。私としても異論はない。子供たちは名誉回復を求めるため、北京の元の居住地と村の幹部の双方に等しく少なからぬ「袖の下」を使った。子供たちは特にそのために村を訪れもした。しかし事はなかなか進まない。村の幹部は「問題ない、外部の調査を待っている。しかしまだ機会がない。」と言う。北京のあのご近所の奥さんは、派出所に出向いて話せば済む問題だと言う。双方とも礼品を受け取っておいて、全くの口先ばかりなのかと私は疑惑を持った。

一年、两年、三年过去,事情还是拖延着。街道上那位大娘给人揭发了受贿
的劣迹;我也看到村里一个不知什么职位的干部写信要这要那。顺姐进医院动了手术,
病愈又在我家干活。她白花了两三年来攒下的钱,仍然是个没户口的“黑人”。每逢节
日,街道查户口,她只好闻风躲避。她叹气说:“人家过节快活,就我苦,像个没处藏
身的逃犯。”

一年、二年、三年と過ぎても進展がなかった。ご近所さんは賄賂を受け取った悪事を暴露しろと言う。どんな職務の者かは知らないが、村の幹部があれが欲しいこれが欲しいと寄こした手紙を私も見た事がある。順姐は病院へ行き手術を受け、病気を治してまた私の家で働いていた。彼女は二、三年来貯めたお金を使ったのに、戸籍は以前として「黒い」ままであった。節季ごとに、街の戸籍調べの度、気配を感じると彼女は身を隠すしかなかった。彼女はため息をつき言った。「みんなは節季を楽しめるのにあたしには苦でしかない。まるで隠れる場所がどこにもない逃亡犯のよう。」

那时候我们住一间办公室,顺姐住她儿子家,每天到我家干活,早来晚归。她一天
早上跑来,面无人色,好像刚见了讨命鬼似的。原来她在火车站附近看见了她家的大小
姐。我安慰她说,不要紧,北京地方大,不会再碰见。可是大小姐晚上竟找到她弟弟家
里,揪住顺姐和她吵闹,怪她卖掉了乡间的房子家具。她自己虽是“黑人”,却毫无顾
忌地向派出所去告顺姐,要找她还帐。派出所就到顺姐儿子家去找她。顺姐是积威之下,
见了大小姐的影子都害怕的。派出所又是她逃避都来不及的机关。

その当時、私たちは事務室に暮らし、順姐は子供の家に住んでいた。毎日家に仕事にきて、夕方に帰る。ある日、朝早くやってきたが鬼でも見たかのように顔色を失くしていた。駅の近くであのお嬢さんを見かけたのだった。心配ない、北京は広いのだからまた出会う事もないわよ、と私は慰めた。ところがお嬢さんは晩方には弟の家を探し当ててしまった。順姐を掴んで、なぜ村の家にあった家具を売り払ってしまったかと悶着を起こしたお嬢さんは自分が「黒い」にも係らず派出所に行き、順姐に貸したお金を返させるよう訴えた。職員が息子の家へ順姐を探しに来た。順姐の恐怖は積もり積もっていたし、お嬢さんの影にもひどく怯えていた。派出所ももう避けられない役所であった。

可是逼到这个地步,
她也直起腰板子来自卫了。乡间的房子是她花钱造的,家具什物是她备的,“老太婆”
的遗产她分文未取,因为“剥削来的财物她不要”。顺姐虽然钝口笨舌,只为理直气壮,
说话有力。她多次到派出所去和大小姐对质,博得了派出所同志的了解和同情。顺姐转
祸为福,“黑人”从此出了官,也就不再急于恢复户籍了。

しかし此処に至って順姐は背筋を伸ばし自分を守った。田舎の家は自分のお金で建てたこと、家具什器も自分で買ったこと、「姐姐」の遺産は受け取っていないこと、なぜなら「搾取した財物は欲しくないから」 順姐は訥々とではあるが、はっきり筋を通して語ったので説得力があった。彼女は何度か派出所へ出向きお嬢さんと向き合い、職員の理解と同情を得た。順姐の禍は福と転じ「黒」の身分からから出て公の身分になったばかりか戸籍も回復となった。

反正她在我们家,足有粮食可吃。
到“四人帮”下台,她不但立即恢复户籍,她错划的阶级,那时候也无所谓了。
我们搬入新居,她来同住,无忧无虑,大大发福起来,人人见了她就说她“又胖
了”。我说:“顺姐,你得减食,太胖了要多病的。”她说:“不行呢,我是饿怕了的,
我得吃饱呢!”

いずれにせよ彼女は私の家に住むようになった。食物は足りていたので食べていかれた。
「四人組」が去り、順姐は直ちに戸籍を回復したばかりでなく、その当時は問題にもされなくなっていた間違った身分も元に戻った。私たちは新居に引っ越し、順姐も一緒に暮らした。何の心配もなくなり大きな幸せがやってきた。人は彼女を見ると、「また太ったわね」と言った。「順姐、食事を減らしたほうがいいわ。太りすぎは体に悪いのよ。」と私は言ったが、彼女は「だめですよ、お腹が空くのは嫌なの、お腹いっぱい食べたいです。」と言った。

顺姐对我不再像以前那样爱面子、遮遮掩掩。她告诉我,她随母逃荒出来,曾在别
人家当丫头,可是她都不乐意,她最喜欢这个地主家,因为那里有吃有玩,最自在快活。
她和同伙的丫头每逢过节,一同偷酒喝,既醉且饱,睡觉醒来还晕头晕脑,一身酒气,
不免讨打,可是她很乐。
原来她就是为贪图这点“享受”,“自由恋爱”了。从此她丧失了小丫头所享受的
那点子快活自在,成了“幺幺”。她说自己“觉悟了”,确也是真情。

以前と違い、順姐は私には体裁をつくろわなくなった。彼女が母と飢饉で逃げた時、別の家でも女中として働いた事があると言った。でもそこは良くなかった。彼女が一番好きだったのはあの地主の家、食べられて遊べて、とても気楽で愉快だった。一緒に働く女の子たちと節季毎にこっそりお酒を飲み、酔っぱらってもまだ飲んだ。目が覚めると二日酔いで酒臭くて叱られたけど、すごく楽しかった。
そうだったのか、彼女が求めていたのはこのような「楽しみ」と「自由恋愛」だったのか。そして可愛い女中が楽しんでいたこの気ままな暮らしは失われ、”ねえや”と成り変った。彼女の「あたし分かったんです」、は確かに偽りのない気持ちだったろう。

她没享受到什么,身体已坏得不能再承受任何享受。一次她连天不想吃东西。我急
了。我说:“顺姐,你好好想想,你要吃什么?”
她认真想了一下,说:“我想吃个‘那交’(辣椒)呢。” “生的?还是干的?”
“北阳台上,泡菜坛子里的。”
我去捞了一只最长的红辣椒,她全吃下,说舒服了。不过那是暂时的。不久她大病,
我又一次把她送入医院。这回是割掉了胆囊。病愈不到两年,曲张的静脉裂口,流了一
地血。这时她家境已经很好,她就告老回家了。

彼女は何も楽しめなくなくなった、もう体はどんな楽しみも受けられないほど損なられてしまった。一度、何日も食べ物を欲しがらないない時があった。私は焦って、「さあ考えて、何が食べたい?」と聞いた。
彼女は暫し真剣に考えてから「唐辛子が食べたい。」と言った。
「生の?それとも干したもの?」
「ベランダの、漬物甕のが。」
一番大きな赤い唐辛子を掬ってくると、彼女は全部食べ気分が良くなったと言った。しかしそれも一時の事であった。程なく病は重くなり、私はまた彼女を病院へ行かせた。
今度は胆嚢を切り取ったが、傷口は二年もふさがらなかったし、静脈瘤も切れて血が流れた。この頃は彼女の家の状況も良くなっていたので、家に帰ると言った。

现在她的儿女辈都工作顺利,有的是厂长,有的是经理,还有两个八级工。折磨她
的那位大小姐,“右派”原是错划;她得到落实政策,飞往国外去了。顺姐现在是自己
的主人了,逢时过节,总做些我爱吃的菜肴来看望我。称她“顺姐”的,只我一人了。
也许只我一人,知道她的“自由恋爱”;只我一人,領会她“我也觉悟了呢”的滋味。

                                          
今では子供たちの仕事も順調で、一人は工場長一人は社長で、更に二人は八級工である。あの意地悪なお嬢さんは、元々「右派」に間違って区分されていたが、政策の実施を受けて国外へ飛び去った。順姐も今は自分が主人で、節季になるといつも私の好きな料理を作って会いに来てくれる。順姐と彼女を呼ぶのも私だけとなった。彼女の「自由恋愛」を知っているのも私だけかもしれない。ただ私一人だけが、彼女の「分かったんです」の妙味を知っている。                      
 一九九一年一月一日
           (終)

                                                2011・4   
原文  http://www.5156edu.com/html/15524/40.html        
[PR]
by dangao41 | 2011-08-23 06:08 | 楊絳 | Comments(0)